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コホート研究、メタ分析、システマティックレビュー、臨床試験|何を信じればいい?


診療をしていると、患者さんがインターネットで見つけた健康情報を見せながら「これって本当ですか?」と尋ねられることがあります。ある記事は「コホート研究で明らかになった」と言い、別の記事は「臨床試験の結果」だと言い、また別の記事は「メタ分析によると」と言います。

医学研究にはさまざまな種類があり、種類によって信頼度が異なります。医学ではこの信頼度を根拠レベルと呼びます。1 コホート研究、臨床試験、メタ分析、システマティックレビューがそれぞれ何で、どれがより信頼できる医学研究なのかを整理してご説明します。

根拠レベル:ひと目でわかる


下の図と表は、上に行くほど信頼できる度合いが高くなります。1

コホート研究、メタ分析、臨床試験、システマティックレビューを含む医学的根拠レベルをピラミッド形式で整理し、どの研究がより信頼できるかをひと目で示す階層図
根拠レベル研究タイプ特徴
最上位複数の臨床試験を統合した分析
(システマティックレビュー+メタ分析)
関連研究を漏れなく集めて統計的に統合。個々の研究の限界を補完
上位臨床試験
(ランダム化比較試験)
患者を無作為に分けて薬とプラセボを比較。因果関係の証明に最も強力
中位観察研究
(コホート研究、患者-対照研究)
特定集団を追跡する、または既に疾患のある人を過去にさかのぼって追跡。研究者は介入しない
下位症例報告、症例シリーズ少数患者の事例を記述。新しい現象の発見に有用だが一般化が難しい
最下位試験管/動物研究、専門家の意見人に適用する前段階、または体系的研究なしに経験に依存

このピラミッドの要点は単純です。より多くの人を、より厳密な条件で比較するほど根拠は強くなるということです。2

各段階を一つずつ見ていきましょう。

システマティックレビューとメタ分析|何が違う?


根拠ピラミッドの頂点には、システマティックレビュー(関連論文を漏れなく集めて質を評価し整理するプロセス)と、メタ分析(それら論文の数値結果を統計的に統合する方法)があります。3

この2つの用語はよく混同されますが、役割が異なります。

システマティックレビューメタ分析
すること関連論文を漏れなく探し、質を評価し、結果を整理する複数研究の数値結果を統計的に統合する
性格「プロセス」(どう論文を集め、選別するか)「方法」(集めた数値をどう統合するか)
たとえ試験範囲に当たる教科書を全部集めて読み、信頼できるものだけを選り分ける作業選り分けた教科書の点数を平均する計算
コクランのシステマティックレビューとメタ分析のプロセスを示すインフォグラフィック。複数の個別臨床試験を選別し、統計的に統合して一つの結論を導く段階を可視化

現実では、この2つはほぼ常にセットで登場します。実際、論文タイトルに両方が併記されるケースがほとんどです。体系的に論文を集め(システマティックレビュー)、その結果を統合する(メタ分析)ことが1セットだからです。4

この統合分析が根拠ピラミッドの頂点にある理由は、個々の臨床試験が持ちうる限界を補完できるためです。臨床試験ごとに対象者数、研究期間、測定方法が異なります。1つの臨床試験結果だけを見ると「この研究だけでそうだった可能性は?」という疑問が残りますが、同じテーマの研究を10〜20本集めて統合すれば、個々の研究の誤差が相殺されます。

ただし注意点があります。統合分析だからといって無条件に信頼できるわけではありません。含まれる個別研究の質が低ければ、いくら多く統合しても結論の質は上がりません。2016年に発表されたある論文では、統合分析をピラミッドの頂点ではなく、根拠を見通す「レンズ」として捉えるべきだと提案しています。5

私もこの見方に同意します。診察室で治療方針を決める際、統合分析の結果があればまず参考にしつつ、その中に含まれる研究の質と一貫性も併せて確認します。

コクラン:統合分析の国際基準

健康情報を探していると「コクラン・レビュー」という表現に出会うことがあります。コクラン(Cochrane)は1993年に英国で設立された国際的な非営利団体で、特定の治療法に関するすべての臨床試験を探し出して体系的に分析し、統合報告書を出版しています。

コクラン・レビューが医学界で信頼される理由は3つあります。第一に、製薬会社の支援を受けないため利益相反が少ないこと。第二に、分析プロセスが非常に厳格であること(独立した評価者2名以上が論文を選別し質を評価)。第三に、新しい研究が出るたびに更新することです。

そのため、ある治療法の効果を確認したいとき、コクラン・レビューがあるなら個別研究より先に確認するのが効率的です。私も気になる点があれば、コクラン・レビューを最優先で参照します。

臨床試験の段階:第1相から第4相まで


臨床試験は、人を対象に薬の効果と安全性を確認する研究です。6 臨床試験の設計は、次の3点で決まります。

第一に、比較群があるか?

プラセボや既存薬と比較する対照試験と、比較群なしで薬のみを投与する単群試験に分かれます。比較群があってこそ「薬のおかげで良くなったのか、時間が経って良くなったのか」を区別できます。単群試験は主に、第1相(安全性確認)のように比較よりも薬そのものへの反応を見ることが目的のときに用いられます。

第二に、対照試験なら——どう分けるか?

患者を薬群とプラセボ群に分ける際、コンピュータが無作為に割り付けるとランダム化臨床試験です。無作為割り付けを行うと、2群の年齢、重症度、基礎疾患などが統計的に似通うため、薬の効果だけを比較できます。無作為でない場合(例:入院順に割り付け)は、群間の特性差が結果を汚染しうるため根拠レベルが低くなります。

第三に、ランダム化臨床試験なら——誰が何を受けたか分かるか?

患者と医師の双方が誰が本物の薬を受けたか分からないようにすると二重盲検、両者が分かった状態で進めるとオープンラベルです。二重盲検は本物の薬とプラセボの見た目を同じにして、心理的バイアスと評価バイアスの両方を遮断します。注射と内服薬のように形が異なって隠せない場合は、オープンラベルで行います。

臨床試験の設計を対照試験と非対照試験に分け、無作為割り付けと二重盲検・オープンラベルまで階層的に示す、コホート研究を含む意思決定ツリー図

この3つがすべて揃った設計——対照群+無作為割り付け+二重盲検——が臨床試験で最も厳格な形であり、第3相臨床試験の標準です。新薬は第1相から第4相までの段階を経ますが、各段階で一般的に用いられる設計が決まっています。7

段階目的規模対照群割り付け盲検
第1相安全な用量範囲の確認20〜100人なし(単群)
第2相効果探索+適正用量100〜300人あり(プラセボ等)無作為二重盲検またはオープンラベル
第3相大規模な効果の実証。FDA承認の要 数百〜数千人あり(プラセボ/既存薬)無作為二重盲検
第4相市販後の長期安全性追跡数千〜数万人さまざまさまざま主にオープンラベル
臨床試験の第1相から第4相まで、各段階の対象人数と目的を示すフローチャート。コホート研究などの観察研究と区別される臨床試験の体系的プロセスを説明する図

ニュースで最もよく引用されるのは第3相臨床試験の結果です。無作為割り付け+対照群+二重盲検をすべて備えた最も厳格な設計だからです。8

第4相は薬が市販された後に行われます。第3相までは数千人規模のため、1万人に1人程度で起こる稀な副作用を見つけにくいのです。第4相では実際の処方環境で数万人のデータを集め、第3相で見落とした長期副作用や特殊集団(高齢者、妊婦など)の反応を追跡します。7 規制当局やFDAが条件を付けて第4相を義務化する場合もあれば、製薬会社が自主的に実施する場合もあります。

観察研究:コホート研究、患者-対照研究、症例報告


臨床試験と観察研究の最大の違いは、研究者が介入するかどうかです。9 臨床試験では研究者が患者に薬を直接投与します。観察研究では、すでに起きたことを観察するだけで、研究者は治療に介入しません。

代表的な観察研究のタイプを、例とともに見ていきましょう。10 核心となる違いは時間の向きです。

例えば「幼少期に抗生物質を多く飲むとアトピーになりやすいのか?」を知りたいとします。

コホート研究は現在から未来へ進みます。新生児1万人を集め、抗生物質を飲んだ子と飲まなかった子を10年間追跡します。誰にアトピーが発症するかを見守るのです。時間順序が明確なため「抗生物質→アトピー」の方向を推論できますが、時間と費用がかかります。

患者-対照研究は現在から過去へさかのぼります。アトピーのある子ども200人(患者群)と、アトピーのない子ども200人(対照群)を集めた後、過去の医療記録を比較します。「アトピーの子どもは過去に抗生物質をより多く使っていたか?」を確認するのです。速くて低コストで、特に稀な疾患に有利ですが、過去記録の不正確さや、患者群が過去をより深刻に想起する記憶バイアスが生じることがあります。

コホート研究は現在から未来へ、患者-対照研究は現在から過去へ追跡するという時間の向きの違いを、抗生物質とアトピーの例で示す観察研究比較ダイアグラム

症例報告は、1人または少数の患者の事例を詳細に記述したものです。新しい疾患や稀な副作用を初めて発見するときに有用ですが、1〜2例では一般化できないため根拠レベルは最も低くなります。

タイプ時間の向き長所限界
コホート研究現在 → 未来因果推論が可能時間・費用が大きい
患者-対照研究現在 → 過去速くて低コスト、稀な疾患に有利記憶バイアス
症例報告新しい現象の初発見一般化できない

観察研究が臨床試験より根拠レベルが低いのには理由があります。研究者が対象者を無作為に割り付けないため、結果に影響する別の要因(交絡因子)が潜んでいる可能性があるからです。9

例えば「ビタミンDを多く摂る人は健康だ」という観察研究の結果があっても、その人たちはもともと健康への関心が高く、運動もして食事管理もしていた可能性があります。ビタミンDの影響なのか、健康的な生活習慣の影響なのか区別できません。

それでも、コホート研究をはじめとする観察研究が無意味なわけではありません。倫理的に臨床試験ができない場合(例:「喫煙ががんを引き起こすか」を確認するために人にわざと喫煙させることはできないため)、観察研究が唯一の選択肢になります。コホート研究の結果が複数の研究で一貫して繰り返されれば、強力な根拠になります。

健康情報を読むときは、これだけ確認してください


ここまで整理した内容を踏まえ、健康関連のニュースやブログ記事を読むときに確認できるチェックリストをまとめます。私もアトピーと食べ物の関連のようなブログ記事を書く際、引用する根拠ごとに根拠レベルも併記するよう努めています。

1. 「研究で明らかになった」と言うとき、どんな種類の研究か?

動物研究なのか、小規模な観察研究なのか、大規模な臨床試験なのかによって、根拠の重みは変わります。「研究結果」という表現だけでは、コホート研究なのか臨床試験なのか区別できません。

2. 対象者数は何人か?

20人対象の研究と2,000人対象の研究が、同じ信頼度であるはずがありません。

3. 比較対象があるか?

「この薬を飲んで良くなった」ではなく、「この薬を飲んだ群がプラセボを飲んだ群より良くなった」かを確認します。比較群がなければ自然回復なのか薬の効果なのか分かりません。6

4. 複数の研究で同じ結論が出ているか?

1つの研究だけで出た結果より、複数の研究で繰り返し確認された結果のほうがはるかに強力です。統合分析(複数の臨床試験を集めて統合した分析)があるなら、個別研究より優先して確認するのがよいでしょう。11

5. 出典が明記されているか?

信頼できる健康情報であれば、論文の出典、ガイドライン名、研究規模が併記されているはずです。「専門家によれば」や「知られている」といった表現だけで具体的な出典がない場合、その根拠はもう一度疑ってみる必要があります。


参考文献


コホート研究の結果しかない健康情報は信じられないのですか?

いいえ。観察研究も十分に有用です。ただし臨床試験に比べて交絡因子が介入する可能性があるため、根拠レベルは1段階低く分類されます。同じ結論を示す観察研究が複数積み重なれば、かなり強い根拠になります。

第3相臨床試験を通過した薬は安全なのですか?

第3相では数百〜数千人規模で効果と安全性を確認しますが、非常に稀な副作用(1万人に1人など)は第3相では見つからないことがあります。そのため市販後の第4相(市販後調査)が存在します。薬を処方された場合は、医師と相談しながらモニタリングすることが重要です。

メタ分析があれば、必ずその結論に従うべきですか?

必ずしもそうではありません。統合分析(複数の臨床試験を統合した分析)の質は、含まれる個別研究の質に左右されます。質の低い研究だけを集めて分析すれば、結論も不確かになります。統合分析があるならまず参考にしつつ、含まれる研究の規模と質も併せて確認すべきです。