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新生児アトピーと乳児湿疹(胎熱)はどう見分ける?|鑑別の基準と対処法


生後1〜2か月の赤ちゃんの頬に赤い発疹が出てくると、保護者の方が最も気になるのは、おそらく乳児湿疹(胎熱)なのか、新生児アトピーなのかという点でしょう。見た目は似ていますが、乳児湿疹(胎熱)は数週間で自然に良くなる一方、新生児アトピーは早期に治療しないと今後一生つき合うことになるアレルギーが生じる可能性があるため、対処法がまったく異なります。1

両者を見分ける重要な基準3つと、アトピーと確認された後の対処法をまとめました。

乳児湿疹(胎熱)と新生児アトピーの見分け方


「胎熱」は医学用語ではありません。新生児にみられる皮膚トラブルの総称で、新生児ざ瘡(にきび)や脂漏性皮膚炎などがこれに当たります。この中で新生児アトピーを鑑別する重要な基準は、かゆみの有無おむつ部位の状態です。2

区分新生児ざ瘡(にきび)脂漏性皮膚炎アトピー性皮膚炎
主な症状かゆみなしほとんどかゆくない強いかゆみ
形態粟粒状の丘疹・膿疱脂っぽい黄色い鱗屑乾燥、赤み、滲出
発生部位顔、胸の上部頭皮、おむつ部位顔、四肢の外側
おむつ部位影響なしよくみられるほとんどきれい
新生児アトピーの症状と乳児湿疹(胎熱)を、かゆみ・おむつ部位・発症時期の基準で比較したインフォグラフィックで、3つの鑑別基準をひと目で整理
新生児アトピーと乳児湿疹(胎熱)を見分ける方法

1. かゆみ

新生児ざ瘡(にきび)や脂漏性皮膚炎では、赤ちゃんはほとんどかゆがりません。一方、新生児アトピーの最も決定的な症状は強いかゆみです。2 アトピーの皮膚ではフィラグリンなどのバリアタンパクの機能が低下して皮膚バリアに隙間が生じ、3 その隙間から外的刺激が侵入して免疫反応とかゆみを同時に引き起こします。4

新生児は言葉で「かゆい」と表現できないため、行動で判断する必要があります。顔を布団や保護者の服にこすりつける、手がしきりに顔へ向かう、夜にぐずって眠りが浅いパターンが繰り返される場合は、単なる乳児湿疹(胎熱)よりも新生児アトピーを疑うべきです。

2. おむつ部位の状態

新生児アトピーは、おむつ部位には出にくいです。2 発疹が頭・顔・四肢の外側では強いのに、おむつ部位だけがきれいであれば、アトピーの可能性が高いと考えられます。

おむつの内側がきれいに保たれる理由はいくつかあります。おむつの中は湿度が高く皮膚の水分喪失が減り、尿中の尿素が天然保湿因子として働きます。おむつが物理的に掻くことを防ぎ、「かゆみ→掻く」の悪循環を断つ効果もあります。5 皮膚をレンガ塀に例えると、おむつの内側はセメント(水分)が十分で、外的刺激が侵入する隙間が少ないということです。

一方、脂漏性皮膚炎はむしろおむつ部位に多くみられます。したがって、おむつ部位の状態は両者を見分けるうえで非常に有用な手がかりになります。

3. 発症時期

乳児湿疹(胎熱)(新生児ざ瘡〈にきび〉・脂漏性皮膚炎)は通常、生後2〜4週に現れ、数週間で自然に改善します。一方、新生児アトピーは多くの場合、生後2〜3か月以降に本格的に始まります。ある出生コホート研究では、正期産児のアトピー発症年齢の中央値は生後4か月でした。6

私は生後2か月以内の発疹であっても、かゆみが明らかでおむつ部位がきれいであれば、アトピーの可能性を残して経過を観察します。時期よりも、かゆみと発生部位のほうがより決定的な鑑別基準だからです。

新生児アトピー確認後の対処法


上記の基準から新生児アトピーが疑われる場合、次の3つをすぐに始められます。

保湿剤のケア

新生児アトピー管理の第一歩は保湿です。高リスク乳児に保湿剤を早期から継続して使用したメタ解析では、アトピー発症リスクが約36%低下しました。7 入浴直後の肌がしっとりしている状態で3分以内に、1日2回以上、十分な量を塗るのが原則です。

CASCADE臨床試験の結果を示すインフォグラフィック。生後9週以前から毎日全身に保湿剤を使用した群が、通常ケアと比べて2歳時点のアトピー発症率を16〜24%低下させた棒グラフと保湿の場面

私は保湿剤を選ぶ際、ローションよりもクリームタイプをおすすめします。クリームのほうが保護膜としての役割に優れ、水分の多いローションより防腐剤も少なく、刺激を起こす可能性が低いためです。アトピーが疑われるときの保湿剤の選び方は、MDクリーム案内をご参照ください。

環境管理

室温は20〜22℃、湿度は50〜60%を保ちます。暖房が強い冬は室内が乾燥しやすいため、加湿器を併用するとよいでしょう。肌に直接触れる衣類や寝具は綿100%素材を使用し、洗濯時は無香料の洗剤を選びます。柔軟剤は残留化学物質が皮膚を刺激する可能性があるため、できるだけ使用しません。

受診が必要なサイン

保湿と環境管理だけでは改善しない、または以下のサインがみられる場合は受診が必要です。

  • かゆみで夜間の睡眠が繰り返し妨げられるとき
  • 皮膚がひび割れたり、滲出液が出るとき
  • 発疹が顔から四肢・体幹へ急速に広がるとき
  • 発熱とともに皮膚状態が急激に悪化するとき

診察では、症状の分布、かゆみの程度、家族歴などを総合的に評価してアトピーかどうかを判断します。必要に応じて、保湿剤に加えて薬物治療を開始します。乳児期のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息へとつながる「アトピー行進」の出発点になり得るため、8 早期管理が特に重要です。アトピー全般の原因と治療方針が気になる方は、アトピー案内をご参照ください。


参考文献


乳児湿疹(胎熱)を放っておくとアトピーになりますか?

乳児湿疹(胎熱)(新生児ざ瘡〈にきび〉・脂漏性皮膚炎)がアトピーへ「進行」するわけではありません。両者は原因とメカニズムが異なる別の疾患です。乳児湿疹(胎熱)は環境管理(室温20〜22℃、湿度50〜60%)だけで、多くは数週間で改善します。ただし、乳児湿疹(胎熱)だと思っていた発疹が、実際にはアトピーの初期症状だった可能性もあるため、かゆみを伴う、またはおむつ部位に発疹がない場合は受診をご検討ください。

新生児アトピーにステロイド軟膏を使ってもよいですか?

はい、必要な場合は医師の処方のもとで使用できます。ただし新生児は体表面積に対する体重比が成人と異なり、全身吸収率が高くなるため、必ず適切な強さの軟膏を処方してもらい、決められた部位と期間だけ使用してください。軟膏のランク別の違いが気になる方は、ステロイド軟膏ランク案内をご参照ください。

アトピーがあると食物アレルギーや喘息も起こりますか?

アトピーのある赤ちゃんは皮膚バリアが弱くなり、環境抗原に感作されやすくなります。その結果、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息へと順に続く「アトピー行進」が起こることがあります。早期に積極的に皮膚バリアを回復させることが、その後のアレルギー疾患の予防にも重要な理由です。